「子どもの家」とは

イタリアでは1900年代当時、急激な都市開発により生まれた数多くのスラムで失業や犯罪が問題視されていました。
そんな貧困に悩む層のための保育所として、スラムの中心であったローマ・サンロレンツォに「子どもの家」という名前の施設が開設されたのです。
「子どもの家」は、開設当時に約60名ほどの子どもが通っていたと言われています。
「保育所」と言っても、当初の「子どもの家」は教育的な目的というよりはどちらかといえば、「保護者が働いている間に、子どもに家を傷つけられないために預けておく施設」という意味合いの強かった場所でした。
そんな「子どもの家」の開設を任されたのが、マリア・モンテッソーリだったのです。
モンテッソーリと子どもの家

精神病院における子どもの向き合い方が認められたモンテッソーリは、1907年に政府から「子どもの家」の教育的な監督を一任されました。
「子どもの家」では子どもが学習するための「教具」と呼ばれる特別なおもちゃと普通のおもちゃや人形などが両方置いてありました。
教具の例として有名なものでは、
大きさや数字の感覚を身につけるための「ピンクタワー」と呼ばれる
大きさの異なる正方形のブロックなどがありますね。
(Lesson9-4で詳しく解説します)
モンテッソーリは「教具」と「おもちゃ」は別の役割を持つと考えており、子ども達は自由時間に「おもちゃ」で遊ぶだろうと考えていました。
ところが、子ども達は教具を自ら選び、真剣な眼差しで集中し遊びはじめたのです。
サン・ロレンツォの奇跡

さらに驚くべきことに、当初は「乱暴で手がつけられなかった子ども」も、教具で遊んでいるうちに穏やかになり、また自ら整理整頓を好むようになったのです。
この出来事は「サン・ロレンツォの奇跡」と呼ばれ、子どもの発達について興味を示していた当時の医者や学者などが子どもの家を見学するまでになりました。
モンテッソーリは自らの病棟における勤務経験で培ったその鋭敏な観察力を生かし、教具で遊ぶ子どもたちと触れ合ううちに「人間の発達の法則」を徐々に理解していく事になります。
この出来事を論文化し、モンテッソーリが1909年に発表した「子どもの家の幼児教育に適用された科学的教育学の方法」がモンテッソーリ教育のメソッドとして世界に注目され、一躍有名になったのです。
現代における「子どもの家」

現代においては、モンテッソーリ教育を実際に行なっている施設のことを「子どもの家」「チャイルドハウス」などと称し、日本においても複数の幼稚園などで導入されています。
「子どもの家」と名乗る事自体は自由であるため、それぞれの園がモンテッソーリ教育への想いをこめ、独自に運営をしているのです。
まとめ
スラム街に生まれた「子どもの家」の教育監督を任される事になったモンテッソーリは、子ども達が教具で遊び成長していく姿を目の当たりにし驚きと感動を覚えます。
人間の発達についての原則を学び、「子どもの家の幼児教育に適用された科学的教育学の方法」として発表した論文が世界的な注目を浴び、モンテッソーリ教育の基礎を築き上げました。
現代においても、多くの児童施設で取り入れられる伝統的な教育の基礎を作り上げたのです。
続いては、モンテッソーリ教育を受けた著名人にはどのような人物がいるのかを見ていきたいと思います。