Lesson3-1 子どもの権利と権利条約

前回のLesson2では、子どもが何かに夢中になる時期である「敏感期」について学んできました。

今回のLessonでは、子どもの権利というテーマで、子どもを取り巻くルールについて見ていきたいと思います。

子どもは社会的にまだ知識や経験が少ないため、守られるべき権利として様々なルールが制定されているのです。

「子どもの権利」を法律や社会的観点から学ぶこの章は、
ともすると難解でモンテッソーリ教育には関係が薄いように思えるかもしれません。

しかし、子どもの教育に携わる一人の教育者として、
「子どもにはどのような権利があるか」
「社会は子どものためにどのように整備されてきているのか」

ということを知ることは、例えるなら運転の際に交通ルールを知るような、欠かすことはできない重要な知識です。

よりモンテッソーリ教育を使いこなせるようになるためにも、基本となる権利やルールへの理解を深めていきましょう。

守られるべき子どもの権利

子どもは熱心な探求家であり吸収力に優れているという反面、
世の中に潜む様々な「危険」から自分ひとりで身を守ることは少しハードルが高いと言えます。

子どもの危険といえば、階段から落ちてしまう、ボールを追いかけて道路に飛び出してしまう・・・などのわんぱくな行動の延長戦として起こる出来事をイメージしてしまいがちです。

しかしながら、現代ではインターネット上で子どもに悪影響となる有害サイトや、お金や性のことがまだまだわからない子どもを陥れるための「罠」が張られているなど、大人が目を光らせなければならない領域はどんどんと増えています。

そんな子どもたちを守るために保障されている権利が「子どもの権利」です。

子どもの権利と権利条約

「子どもの権利」とは、世界中のすべての子どもが心身ともに健康に、自分らしく育つための権利です。

ここで言う「子ども」とは、18歳未満の全ての子ども、およびアダルトチルドレンと定義されています。

(アダルトチルドレンとは、子どものころに、家庭内トラウマ(心的外傷)によって傷つき、そしておとなになった人たちを指しています。)

1989年11月の国連総会で採択された、前文と54条の条文からなる「子どもの権利条約」では、18歳未満のすべての子どもの権利と、その権利を守るために国や大人がしなければならないことが書かれています。

日本も子どもの権利条約を批准

子どもの権利の基本ルールは、日本だけでなく世界で定められており、現在、世界中で196の国および地域がこの条約を守ることを約束しています。

日本は比較的この条約を締結するタイミングが遅かったのですが、1994年、世界では158番目にこの条約を批准しています。

この条約を批准したすべての国は、これらすべての権利について子どもたちに知らせ、保障する義務があるのです。

世界の「子どもクラブ」では子どもが積極的に活動

世界中にある子どもの権利条約に基づいて作られた「子どもの権利クラブ」では、子どもが大人に混ざって積極的に会議に参加をして意見を言うなど、様々な取り組みがなされています。

地方行政などに携わる重要な局面であっても、
地域住民である子どもの意見を積極的に取り入れようとする姿勢や取り組みは、
日本ではそこまで多く見られない事象です。

国や大人たちは、この「子どもの権利」に基づいて、子どもの発言しやすく生きやすい環境を整える必要があるのです。

続いては、「子どもの権利」とは具体的にどのようなものを指しているのかを見ていきたいと思います。